アップデイト展示システム

アップデイト展示システム
広がる学びの展示システム

持続する、をデザインする

長年ミュージアムづくりに携わってきてずっと感じているのは、持続しないカタチをつくってはいけない、ということ。 ミュージアムにとって、開館は完成ではなく、始まりの日。 そこからいかに市民の学びの場として持続的に機能していくかが一番大切で、人々がくりかえし訪れて学びを深めていける仕組みづくりや、持続的に無理なく運営していけるシステム構築こそがデザインの肝だと考えている。

環境省「ストップおんだん館」。アップデイト展示システムで構成された展示を見る来場者たち

展示は、単に情報や知識を伝えるものではなく、考えを深め、広げていくプロセスをつくるものだと私たちは捉えているので、気づき、発見、やりとり、共有といったそれぞれのプロセスに合わせてユニットを組み合わせ、対象者や学びの深まりによって組み替え、更新していくことが容易にできるアップデイト展示システムを考案し、提案している。

市民がくりかえし訪れる場に

展示替えをしたいけれど、展示が固定的で変えることができない。企画展はしているけれど、一定の場所でしかおこなえないので、全体の印象が変わらない。大幅に変えようとするとたくさんの予算がかかる、といった悩みをかかえていませんか? いつまでも同じ展示では、くりかえし訪れる動機は生まれてきません。新たな展示やプログラムを常に生み出し、それらを組み合わせて、学びを深め広げていくことで、市民がくりかえし訪れる学びの場になっていくのである。

環境省「環境パートナーシッププラザGEIC」でのスタッフによる展示設営

アップデイト展示システムの主な特徴は、展示替えや多様な空間づくりのために、展示什器と壁面バー、パネルやモニターなど20種類以上の展示ユニットが同じ規格で統一され、自由に組み合わせられるようになっていること。特別な技術がなくても、パネルの配置やユニットの組み合わせが自在にできるので、展示替えの設営や、来館者にあわせた日常的な配置換えなども簡単にできる。

アップデイト展示システムを活用した展示替えの様子
地域へ広がる学びの開発拠点

地域に密着した市民の学びの場であるためには、来館者だけでなく、地域へ広がっていく仕組みをつくることが大切である。

そのため施設で開発した展示プログラムなどを地域に広げていきやすいように、パネルの大きさを規格化し、展示ユニットも組み立てやすい形状になっている。このような特徴によって、製作、貸し出し、更新などがしやすくなり、施設を訪れる人だけでなく、学校、他の社会教育施設、イベント出展、企業研修など、さまざまな主体と連携しながら学びの場が広がっていく。

たとえば、開発した展示プログラムは、使い方マニュアルと共に専用のボックスに収納して貸出キットにすれば、館内で使用するだけでなく、学校や他の社会教育施設、イベントや研修など、他の主体と連携した活動へと広がっていく。また、貸出キットの使い方を伝える研修をおこなうことで、館のスタッフだけでなく、関心のある人々や学生、市民団体など、地域で学びを広げていく担い手が育まれていく。このようなプロセスまでも含めて、私たちはアップデイトシステムだと考えている。

展示施設だけでなく、暮らしの場にも

これまでは主に展示施設で活用されていたアップデイト展示システムだが、今後は暮らしの場にも導入していきたいと考えている。つまり、家にも学びの場としての機能をプラスしていきたいのである。

乗馬クラブ「グラーネライディング倶楽部」のクラブハウスでの展開。イベントやグッズ販売、馬についての情報が展示される。

アップデイト展示システムには、本棚やテーブルとしても活用できる小型のシステム「つくらしシェルフ」があり、これまでもいくつかの施設に導入してきたが、今後は、展示もできる本棚やテーブル、ワークショップができる家など、暮らす人の個性やイマジネーションを広げ、クリエイティブな暮らしをつくりだすシステムの1つとして活用していきたいと思っている。

*アップデイト展示システム:開発設計製作(2001年〜)
   主な導入施設:兵庫県立 一庫公園
          環境省 ストップおんだん館
          環境省 地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
          国頭村 やんばる学びの森 ビジターセンター
          豊田市 環境学習施設エコット
          三菱地所 丸の内さえずり館
          鹿児島市 環境未来館

*つくらしシェルフ:特許第5460345号

*掲載誌:ミュゼ124号、DOME67号